ラジドラ台本ワンライチャレンジby花屋敷 舞台編2

おはこんばんにちは! 放送班・制作班・広報班所属文学部3回生の木村英です。

新学期が始まりましたね!また大変な日々が始まるのかと思うと、少なからず憂うつにはなりますが、なんかやたらと授業が被るひとがいたり、必修の授業で出会った人と意気投合したり、食堂でコミケよろしくユザネと顔を確認し合ったり……と、新たな出会いが起こりうるのもまた事実。春の陽気にあてられすぎて体調を崩さないようにしつつ、楽しんでいきましょう。

OHBにも、見学者の方がぞくぞく来てくださって嬉しいです!


さて。今週の「ラジドラ台本ワンライチャレンジby花屋敷」のお時間です。今回はとってもお久しぶり。そしてきっちり半年ぶり。舞台編です。

このコラムは”花屋敷”というペンネームを使っている私、木村英が1時間でがんばってラジドラ台本書くぜ!というものです。より詳細な説明は第1作目で無駄に長く書いているので、気になる方はそちらを確認していただけると幸いです。

またいつもはチャレンジするにあたり、縛りをつけています。

しかし!今回は!!なんと!!!舞台編!!!!

すなわち!!!!!

アクタースワップ 第2回公演』ラジオドラマパートの台本公開でございます!!!!!!

先日4月10日(月)にOHB公式YouTube上に公開いたしました、『アクタースワップ 第2回公演』にはご来場いただきましたでしょうか。ほんのちょびっと長いですが、本公演は途中入退場可能ですので、お気軽に寄ってくださいませ!

ちなみにラジオドラマ『魔法は一生もの』は1分24秒からです!

今回はこのラジオのなかで演じていた、ラジオドラマの台本を投稿いたします。お気づきの方はいらっしゃらないかもしれませんが……ラジドラ台本ワンライチャレンジの第26作目のアレンジバージョンでございました。

少女役も娘役も、なんなら魔女役も、すべて1人でやると、それはそれで面白いかもしれません。

それではさっそく、どうぞ!


人物設定(執筆後作成)

  • 少女/娘:お母様のことがとても大切な女の子。かつて魔法の力を欲していた。
  • 魔女:山奥にひっそりと暮らす魔女。時折麓に降りて町へ変装しつつ出かけるとき、どうしてか何かしらのアクセサリーを買って帰ってしまう。渡す相手もいないはずなのに。

(♬火事の音)(少女の台詞は全部ひらがなだと思って)
少女「……お姉さん、だれ……?」
魔女「あたしは魔女よ、お嬢ちゃん」
少女「魔女……? 魔女って、お名前?」
魔女「名前じゃあないさ」
少女「じゃあ、なに……?」
魔女「魔術……はわからないか。魔法を使うひとのことさ」
少女「まほう……? 魔法って、知ってるよ、なんでもできるんだよね?」
魔女「何でもではないがねェ」
少女「ねぇ魔女さん、お願いがあるの。魔法つかってよ」
魔女「おやお嬢ちゃん。魔法をお望みかい?」
少女「うん。お願いを叶えてほしいの」
魔女「そのために魔法の力が欲しいのかい」
少女「ほしい」
魔女「……どうして?」
少女「あのね、お母様がね、あの火の中にいるの。お母様の手を引っ張ってお外に走ってたのに、途中で手が離れちゃったの」
魔女「なるほど。お嬢ちゃんはお母様を助けたいのかい?」
少女「うん」
魔女「ほォ。……つかぬことを聞くが、お嬢ちゃん。お父様は?」
少女「お父様? お父様なら……、あの中にいるよ」
魔女「……あの火の中に? お父様は、助けなくていいのかい?」
少女「いいの」
魔女「……そォ」
少女「でもお母様は助けたいの。ねぇ魔女さん。お母様を助けてよ、おねがい、……おねがい、します」
魔女「……いいよ。お嬢ちゃんの願いを聞き入れてあげる」
少女「っ! ほんと?」
魔女「あァ、本当だとも。ほら、お嬢ちゃんはもう逃げな。ここにも直に火が回ってくる」
少女「……魔女さん」
魔女「なァに」
少女「わたし、お母様が大好きなの。だから、絶対、お母様を助けてね」
魔女「あァ……絶対さ。絶対に叶えてやろう」

(時が経って)
(♬山奥、木製のドアを叩く音)
魔女「……はいはい、(♬ドアを開く音)どちらさま? ……おや」
娘「……こんにちは」
魔女「ほォ……こんな山奥に、うら若き乙女が何か用?」
娘「魔女さん……、ですか」
魔女「そォだとしたら?」
娘「……私、昔、貴女に助けられました」
魔女「ほォ……見たことのある顔だと思ったら、道理で」
娘「! 覚えていらっしゃいますか」
魔女「二十年くらい前かい。火がついた屋敷から逃げてきて、母親を助けてくれと乞うた子だろう」
娘「そうです! ……今日は、魔女さんに会いたくて、来ました」
魔女「そォ」
娘「先日、私の母が亡くなりました。病死です。……その、母の遺書に、貴女が……魔女さんが、私の、本当の母親であると、書かれてありました」
魔女「……そォ」
娘「魔女さん。訊きたいことがたくさんあります。答えて、いただけますか」
魔女「……はぐらかそうと、思ったんだが。できそうにないね」
娘「……お願い、します」
魔女「……ふっ、いいよ、入りなさいな。ようこそ、魔女の家へ」
娘「お邪魔します」

(♬ティーカップを机の上に置く音、木製がいい)
魔女「ハーブティーはお好き?」
娘「母が好きだったので」
魔女「そら良い趣味だ」
娘「……魔女さんは、私の本当の母親なんですか?」
魔女「ふっ、早速だね」
娘「いちばん気になる、ことなので」
魔女「本当の母親というのを産みの親っていう意味で使うなら、まァそうだね」
娘「……」
魔女「……驚いた?」
娘「それはまぁ……」
魔女「……でもねェ、あたしはおまえのお母様が、おまえの本当のお母様だと思っているよ」
娘「それは……どういうことなんです?」
魔女「あァ……大丈夫、ちゃんと話をするよ。三、四十年ほど前の話さ。魔女であるあたしは、ある一人のただの男に出逢った。そいつは魔女が嫌いだった。だけどあたしは好きになった」
娘「それが、私のお父様?」
魔女「……そうだね。あたしだって、工夫すれば普通の女になれるから、十年ちょっとは騙せたんだがねェ。……妊娠して、二年が経って、やっと産まれて、それからその子が喋り始めるのに三年かかって、その頃にとうとう断罪されたよ」
娘「産まれるまで二年? 長く、ないですか?」
魔女「魔女はねェ、人より長く生きるのさ。不老でも不死でもないが、ただほんの少し、時の流れが違う。……あたしから産まれてくる子もそうだった。人よりゆっくり成長した」
娘「……私も、魔女?」
魔女「ただの人に育ってほしいと身勝手にも願ったよ。だからあたしがあの屋敷から出て行くとき、信頼のおける女に子どもを託した。あの子とあの男にそれぞれ呪いをかけて」
娘「呪い? ……魔法?」
魔女「正しくは魔術だねェ。でも呪いみたいなものさ。あの子には、ほんの少し成長を早める呪いを、あの男には、……おまえと、おまえの母親を傷つけないよう縛る呪いを」
娘「あ……、それも、不思議だったんです。お父様は私のことをひどく嫌っていた、憎んでいた。だから私も、お父様のことが嫌いだった。でも、暴力を振るわれたことはないんです」
魔女「それならよかったよ。心の底から思う。だけど……元はといえば、すべて最初からあたしが悪かったのさ。あたしが、魔女の分際で、恋をしたのが悪かった」
娘「魔女さん……」
魔女「あの屋敷が火事になった日、その数日前からある噂を聞いてね。『町で一番大きな屋敷に魔女がいる』。どこから流れたものかはわからないが、おまえの父親がそれを利用して変なことをしでかすんじゃないかと思って、久しぶりに向かったのさ。まァ、間に合わなかったがねェ」
娘「……あの火は、お父様がつけたものなのでしょうか」
魔女「……真実は知らないよ、あたしにもね。……屋敷から逃げて、母親と二人きりで、おまえは幸せだったかい?」
娘「幸せでした。慎ましい暮らしになったけれど……お母様も、以前よりのびやかになったように見えて。最期まで、笑顔でした」
魔女「そォ……それなら、よかった……。あの子にも、苦労をかけた」
娘「……魔女さん」
魔女「なァに」
娘「魔女さんは……ずっと、こんな山奥で生活しているんですか」
魔女「そォだよ。たまには町に降りるがね。……お嬢ちゃん」
娘「はい?」
魔女「おまえは、今まで通り普通に暮らせるよ」
娘「……え」
魔女「言ったろう。おまえに成長を早める……ただの人と同じ時間の流れで生きていける呪いをかけたって。その呪いはまだ続いているよ。おまえは、このまま何もしなければ、ただの人とまったく同じだ。町には親交のあるやつもいるだろう。恋だってしていい。あたしのようにはならないさ」
娘「……でも、じゃあ魔女さん、は?」
魔女「あたしのことなんか気にしなくていい。……だってもう、母親失格だろう」
娘「そんなことはっ」
魔女「大丈夫、おまえが死ぬまで、あたしは生きてるよ。おまえにかかった呪いが切れることはない」
娘「そんな心配はしてないです、魔女さん」
魔女「……なんだい」
娘「一緒に、暮らしましょう。……貴女さえよければ」
魔女「……また火をつけられるかもしれないよ」
娘「ここで暮らしましょう。同じ時を、生きましょう」
魔女「……」
娘「お母様」
魔女「あたしにそれを使わなくていいよ。おまえにとってお母様はあの子のことだろう」
娘「私を育ててくださったお母様は、家の中ではずっと名前を呼ぶようしつけられていました」
魔女「……え?」
娘「きっと、本当のお母様が貴女だからなんでしょう。納得がいったんですよ、私は」
魔女「……高望みじゃあないかい?」
娘「私も望んでいます。貴女は私と母の命の恩人です。貴女がいなければ、私はいなかった」
魔女「……何もない、暮らしだよ」
娘「二人で暮らせば、きっと楽しいですよ」
魔女「そうかい。……そうだといいねェ」


このようなお話でした。
第1回公演とはずいぶんテイストの変わったお話になったと思います。

ラジオドラマの台本を書いているとき、「こういうふうに読んでほしい」といった指示を台詞外に書き込むことがあるのですが(例えばこんな感じ→舞台編)、今回の台本には何も書き込みませんでした。それは、表現において特殊なことがあんまりなかったからでもありましたが……とかく、パーソナリティの相方である、中安さんが私の拘りに気づいてくれるからです。

2点ほどわかりやすいところで言えば……

少女「でもお母様は助けたいの。ねぇ魔女さん。お母様を助けてよ、おねがい、……おねがい、します」

ここでは、少女が自分の思いのままにお姉さん(魔女)に「おねがい」って言ってましたが、「年上の人に頼むときは丁寧な言葉で」っていう教えを思い出して、「おねがい、します」と続けているのです。

娘「……お願い、します」

これは成長した娘が、魔女の家に来たときの台詞です。娘は覚えていないだろうけど、少女のころと同じお願いの仕方をしていますね。

……と、いうのを、中安さんはしっかり読み取ってくれてました。ありがた~さすが趣味が合うというより解釈の合うソウルメイトだぜ。

それでは本日はこのへんで。もしこういう話を読んでみたいとか、もう少し説明してとか、いろいろお話したいこと、聞きたいことがありましたら、コメント欄に書いてくださったらうれしいです!

今年度はアクタースワップもちょこちょこ開演する予定なので、気になったところからご自由にご入場ください!


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