ラジドラ台本ワンライチャレンジby花屋敷 第53作目

おはこんばんにちは! 放送班・制作班・広報班所属文学部3回生の木村英です。

とうとう3回生になってしまいました。恐ろしい。

そんなことより。

岡山大学に入学した皆さま、おめでとうございます!🌸


さて今日も今日とて。今週の「ラジドラ台本ワンライチャレンジby花屋敷」のお時間です。53っていう数字は変な数字だなと思うんですが、でもこの微妙な感じが好きです。今回は入学式特別編。

このコラムは”花屋敷”というペンネームを使っている私、木村英が1時間でがんばってラジドラ台本書くぜ!というものです。より詳細な説明は第1作目で無駄に長く書いているので、気になる方はそちらを確認していただけると幸いです。

またチャレンジするにあたり、いつもは縛りをつけています。
ですが今日は、せっかく入学式の日だし、ちょっと始まりの季節っぽい話を。

今以下に載せる台本は1時間で制作したものです。誤字脱字誤用等あるかもしれませんが、お許しを。よ~い、スタート!


人物設定(執筆後作成)

  • 勇樹(ゆうき):新入生、大学生。これから付き合いがあると思う初対面の人にはどうやって話せばいいかわからなくなってしまうきらいがある。道行く人とか、これから会わないだろうみたいな人には割と普通に話せる。
  • 先輩:学生寮の裏にある桜の木の下で、勇樹が出会った先輩。勇樹が出会ったのは女性だった。笑顔で話しかけてきて、笑顔で帰る、気さくな先輩。
  • 寮の先輩:勇樹の同室になった学生寮の先輩。窓の外をちらと見下ろしてみたら、同室になった新入生が桜の木の下で、誰かと喋っていた。

先輩「あれー? そこにいるのは、新入生かな?」
勇樹「えっ」
先輩「こんにちは!」

勇樹モノローグ「入学式が終わって、学生が帰り始める夕方頃。学生寮の裏の桜の木の下にいたおれに、その人は笑顔で話しかけてきた」

先輩「きみ、新入生? いやきっと新入生だ! そうだろう?」
勇樹「そうですけど」
先輩「やっぱりな! 見ない顔だもん、わたし、この大学の学生は全員覚えてるんだよ!」
勇樹「学生全員……?」
先輩「そう!」
勇樹「……はあ」
先輩「あれ、ちょっとずつ身体引いていってない? 逃げないで! こわいひとじゃないよ!」
勇樹「えぇ……」
先輩「なんでそんな疑わしいって顔するの! 大丈夫だよ、善良な先輩だよ」
勇樹「……」
先輩「信じてない!? ……まぁいいや。でも本当に大丈夫だよ。きみに何かしようってわけじゃないから。そんなこわがらないで」
勇樹「……はい」
先輩「ほら、もう一回座って座って。きみ、お名前は?」
勇樹「ゆうき、です」
先輩「なんて書くの?」
勇樹「勇気が出るの勇に、大樹の樹です」
先輩「おー! 良い名前だね! 勇気の大樹だ。勇樹くん、ここにいるってことは学生寮に入った子?」
勇樹「あ、はい」
先輩「きみか! 今年入寮した男の子すくないよねー4人だっけ?」
勇樹「3人です」
先輩「ありゃ1人多かったか。今年は女子の方はもうちょっといるんだけどねー。やっぱり学生寮も人気なくなってきてるかー」
勇樹「建物、古いから」
先輩「あぁそっかー、それが良い味出してると思うんだけどなー」
勇樹「おれも、そう思います」
先輩「お、良さがわかる子かきみ! 良いセンスしてるね! ……ところで勇樹くん、きみは悩み事があるのかい?」
勇樹「え?」
先輩「何か悩んでることがあるんだろう? あるはずだ、じゃないとこんなところに来ないからね!」
勇樹「……い、いやっ、桜が綺麗だなって思って、それだけ、です」
先輩「たしかにここの桜は綺麗だ。見事だと我ながら思っているよ。でも入学式があった今日、入寮式だってあったんじゃないか? それなのに、新しい自室にいないでわざわざこんな寮の裏に来てしまっている。部屋は1つ上の先輩と一緒なのに」
勇樹「う、えっと」
先輩「寮や部活、サークル、履修登録とか学生生活とか、そんなことはその先輩に聞けばいい」
勇樹「あの」
先輩「……きみは、自分のことを話すのが苦手なんだね。急に人との間を詰められると怖気づいちゃうし、知らない人たちばかりのなかに投げ込まれると途端に萎縮してしまう」
勇樹「そ、そこまでじゃ! ……ない、はずです」
先輩「……うん。克服しようとがんばっているんだね、良いことだ! これからもがんばりたまえ」
勇樹「はい……?」
先輩「だから、その努力に、わたしも少し協力させてくれない? 名も知らぬ、これから会うかもわからない先輩になら、話せることもあるでしょ?」
勇樹「……、あ、の」
先輩「うん。ゆっくりでいいよ」
勇樹「……あなたの、言うとおり、おれは人見知りで……学生寮に入ったのは、それを克服するためで」
先輩「その時点ですでにとってもがんばってるね!」
勇樹「でもやっぱり、知らない人といるのは、なんか、その、怖くて……先輩が怖いってわけじゃないんですけどっ、でも」
先輩「うんうん、大丈夫だよ。まだ始まったばかりだし。その先輩自身が怖くないなら、やっていけるよ」
勇樹「……部屋から、出てきちゃったし……失礼な態度取っちゃったって思うと、余計に……」
先輩「申し訳なさがあるんだね。でも……」
勇樹「……?」
先輩「……うん、大丈夫。じゃあ勇樹くん」
勇樹「はい?」
先輩「まずお部屋に戻ります」
勇樹「え」
先輩「そうして、今わたしに話してくれたことを、同室の先輩くんにも話します」
勇樹「えっ?」
先輩「つっかえてもいい、たどたどしくてもいいよ。わたしはこの大学の学生全員覚えているけど、ここの学生寮に住む子のことは一際良く知っているんだ。あの子たちはちゃんときみが話し終わるまで待ってくれる。わたしが約束するよ」
勇樹「あなたが……?」
先輩「うん! だから、大丈夫! ほら笑って! 桜の下で暗い顔なんて許さないんだから!」
勇樹「あの、あなたは、」
先輩「それに、もうすぐ晩ご飯の時間だよ! 寮のごはんを侮るなかれ、めちゃくちゃおいしいよ」
勇樹「あの!」
先輩「ということで私も帰るよ! じゃあね、新入生、我らの同胞! きみの大学生活に、幸多からんことを!」
勇樹「あ、待って! ……行っちゃった……」

勇樹モノローグ「笑顔で話しかけてきたどこか不思議な人は、笑顔でどこかへ帰ってしまった。このままここにいてもどうしようもないし、事実夕食の時間も近づいていたので、おれは新しい自分の部屋に戻ることにした」

勇樹「帰ったら、話さなきゃ」
先輩回想「つっかえてもいい、たどたどしくてもいいよ」
先輩回想「あの子たちはちゃんときみが話し終わるまで待ってくれる。わたしが約束するよ」
勇樹「……誰だったんだろう、あの人は」

寮の先輩「お、おかえり」
勇樹「……あ、えと」
寮の先輩「そんな畏まらなくいいよ、自分の部屋なんだからくつろぎなって」
勇樹「あ、ありがとうございます」
寮の先輩「おう」
勇樹「……あの、き、聞いてほしいことが、ある、んですけど」
寮の先輩「うん? なんだ? ……ふは、だからそんなカチコチになんなよ。俺ら1個しか違わないぜ? 気楽に気楽に」
勇樹「は、はい……。すぅ、はぁ……。すいません、あの、もう気づいてるかもしれないんですが、おれ、人見知りで、しかも極度の」
寮の先輩「……うん、まぁ気づいてたな」
勇樹「でも克服したくて、でもやっぱり怖くて、あの」
寮の先輩「大丈夫大丈夫、聞いてっから、ゆっくり話していいよ」
勇樹「あ、……はい。だから、先輩に、失礼な態度取ってしまうかもしれないんですけど、少しの間だけは、どうか許してくれませんか」
寮の先輩「少しの間と言わず、いつまでも。お前が悪いやつじゃないんだなってのはわかったし! ったく、心配性でもあるんだな、大丈夫だよ、ほんとに、マジで」
勇樹「ありがとう、ございます」
寮の先輩「……それに、約束されちゃったし」
勇樹「え?」
寮の先輩「いや……いや、なぁ、お前、さっきどこにいたんだ?」
勇樹「あ、寮の裏の、桜の木の下に……」
寮の先輩「その桜、咲いてた?」
勇樹「え? 咲いてましたよ。すごい綺麗でした。この部屋の窓から見えますよね。おれ、知らなくて」
寮の先輩「そうだな、この部屋から見えるよ。ほら、見てみ」
勇樹「……? はい……。……あれ?」
寮の先輩「……咲いてないだろ?」
勇樹「え、でも、おれ……この部屋を出る前に見たんです」
寮の先輩「ここの裏にある桜、八重桜なんだ。八重桜が開花する時期、知ってるか?」
勇樹「……たしか、ちょっと遅いんですよね」
寮の先輩「そ。4月中旬とかだとさ」
勇樹「……咲いてるの見たの、本当なんです」
寮の先輩「いや疑ってないよ。そういう伝説……七不思議? みたいなのがあるんだ、この寮には」
勇樹「伝説……」
寮の先輩「入学式から悩みがあるような学生には、学生寮の裏の桜が咲いて見える。それで、実際に桜の木の下に行ってみたら……やたらと気さくな先輩が現れるってさ」
勇樹「その人、会いました、おれ」
寮の先輩「そっか。ま、名前は誰も知らないらしいけど。お前は聞けた?」
勇樹「いや……」
寮の先輩「やっぱりかぁ。……悩み事、なくなった?」
勇樹「……はい。めちゃくちゃ、気さくな先輩でした」
寮の先輩「みんなそれしか言わねぇじゃん! 去年は俺の友達が会ったらしいんだけどさ、そいつもそれしか言わねぇの! どんな人だったのか教えろよ~!」
勇樹「ははっ、いやほんとに、桜みたいにやさしくて、おっきな人でしたよ」


縛りはなかったけど、チャレンジ成功でしょう!

お話の膨らみとしては正直あんまりないかもだし、「桜の木の下」というありがちな設定ではありますが、どうか佳い日になりますようにと願って。

どうやら岡山大学の桜も見頃のようですよ。

私は文学部のオリエンテーションの日に見た、文法経講義棟のそばで見事に咲いていた桜をよく覚えています。風が吹いてははらはらと散っていく様子を見て、「あの桜の木の下に、なんか埋まってても不思議じゃないな……」と思ったりしたものです。

それでは本日はこのへんで。もしこういう話を読んでみたいとか、もう少し説明してとか、いろいろお話したいこと、聞きたいことがありましたら、コメント欄に書いてくださったらうれしいです!

どうか皆さまの大学生活が実りある毎日になりますように!


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